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- 信頼性への取り組み: 1996〜1998年のPC Watchの記事(発表・価格調査・コラム)の原文と、英語版・日本語版Wikipedia、Lenovo公式動画、海外のYouTubeレビューを読み比べて書いた。アメリカの当時の雑誌・新聞のレビューは、この環境から原文を開けなかったため、英語版Wikipediaに出典つきで書かれた見出しを使っている。資料ごとに違う数字は両方を書いた。写真はWikimedia Commonsのパブリックドメインのもので、撮影者を写真の下に書いた。
ThinkPad 560は、1996年に出たIBMの薄型ノートである。A4ファイルの大きさで厚さ約3cm、重さ約1.9kgの本体に、12.1型の液晶とフルサイズのキーボードを収めた。フロッピーやCD-ROMのドライブを外付けにして薄さを取った割り切りは、のちの「Xシリーズ」につながる、ThinkPadの薄型ノートの出発点になった。この記事では、560の仕様と、歴史に残った理由、当時と今のレビューの評価を、当時の記事と海外の資料、動画でまとめた。
- 1996年5月にアメリカと日本で発表された。日本での標準価格は37万8,000〜59万8,000円で、秋葉原では発売直後に品切れが続いた
- レビューでほめられたのは、薄く軽いのに、画面もキーボードも妥協していないこと。弱点は、ドライブが外付けで、画面の解像度が800×600だったこと
- 560・560E・560X・560Zの4世代が、1998年まで同じ本体で続いた。後継は570で、その流れは2000年のXシリーズへ受けつがれた

写真:Marus/パブリックドメイン/Wikimedia Commons
560のスペック(仕様)
初代ThinkPad 560の主な仕様は次のとおり。CPUと液晶の違いで3つの構成があった。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表 | 1996年5月21日(アメリカ)、5月28日(日本) |
| CPU | Pentium 100MHz・120MHz・133MHz |
| メモリ | 8MB(最大40MB) |
| 記憶装置 | 810MBまたは1.08GBのHDD |
| 画面 | 12.1型TFT(800×600)。100MHzの機種だけ11.3型DSTN |
| キーボード | フルサイズ(日本語89キー)、TrackPoint III |
| 大きさ | 297×222×31mm(A4ファイルサイズ) |
| 重さ | 約1.9kg(バッテリー込み)。米IBMの発表は4.1ポンド(約1.86kg) |
| ドライブ | FDDは付属の外付け、CD-ROMは別売の外付け |
| バッテリー | リチウムイオン、約3時間 |
| 端子 | シリアル、パラレル、外部ディスプレイ、マウス・キーボード、赤外線、音声入出力、PCカード(TypeII×2) |
| OS | Windows 95、Windows 3.1、OS/2 |
| 価格 | 2,699ドル〜(アメリカ)、37万8,000〜59万8,000円(日本の標準価格) |
出典:PC Watch(1996年5月22日)、PC Watch(1996年5月28日)、日本語版Wikipedia。映像チップは、PC Watchの発表記事では「Trident Cyber 9385」、Wikipediaと1997年のPC Watchの記事では「Cyber 9382」となっている。
Lenovoは、560を紹介する短い公式動画を公開している。タイトルは「Thin, No Compromise(薄く、妥協しない)」である。
560・560E・560X・560Zの違い
560は、同じ297×222×31mmの本体のまま、中身を入れかえて4世代続いた。日本での発売時期と価格は次のとおり。
| 機種 | CPU | 価格 |
|---|---|---|
| 560 1996年5月 | Pentium 100〜133MHz | 37.8万〜 59.8万円 |
| 560E 1997年6月 | MMX Pentium 150・166MHz | 52.8万円 (166MHz) |
| 560X 1997年12月 | MMX Pentium 200・233MHz | 49.8万・ 56.8万円 |
| 560Z 1998年9月 | Pentium II 233・300MHz | 39.8万〜 57.8万円 |
- 560E:MMXに対応し、メモリは16MB(最大80MB)、HDDは2.1GBになった
- 560X:USBとCardBusに対応し、バッテリーは3.5時間に伸びた。映像チップはNeoMagic MagicGraph128XDに
- 560Z:CPUがPentium IIになり、キーボードはキーストロークが深くなった
出典:PC Watch(1997年6月9日)、PC Watch(1997年11月26日)、PC Watch(1998年9月9日)。価格は日本での発表時の標準価格または直販価格。560Eの150MHzはWikipediaによる。
560が歴史に残った理由
560は、性能で記録を作った機種ではない。それでも今も名機として語られるのは、次の5つの理由がある。
- 厚さ約3cmに、大きな画面とフルサイズのキーボードを収めた
- ドライブを外に出す「1スピンドル」の割り切り
- 発売直後から品切れが続くほど売れた
- 同じ本体のまま、3年で4世代続いた
- のちのXシリーズにつながる、薄型ThinkPadの出発点
1. 薄いのに、画面もキーボードも大きい
1990年代半ばのノートは、厚みがあって重いものが多かった。たとえば1997年に出た同じIBMのThinkPad 385は、厚さ62mmである(PC Watch)。
560は厚さ31mmと、その半分しかない。それでいて、画面は当時として大きい12.1型で、キーボードはフルサイズだった。日本IBMは560のねらいを、PC Watchの記事のことばで言えば「携帯性と操作性の両立」に置いていた。小さくするために画面やキーボードを削るのではなく、薄くすることで持ち歩きやすくしたのが新しかった。
1998年の時点でも、ThinkPadの主な機種を並べると560Zの薄さと軽さは目立つ。
| 機種 | 厚さ | 重さ |
|---|---|---|
| 770X(最上位) | 56mm | 3.5kg |
| 600(CD-ROM内蔵の薄型) | 36.5mm | 2.5kg |
| 560Z | 31mm | 1.9kg |
| 380Z | 62mm | 3.3kg |
出典:PC Watch(1998年9月9日)の仕様表。
2. ドライブを外に出す割り切り
薄さのために、560はフロッピーのドライブを外付けにし、CD-ROMも内蔵しなかった。本体の中に入っている記憶装置はHDDだけである。英語版Wikipediaは、500番台のThinkPadを「HDDだけを内蔵し、ほかのドライブはすべて外付け」の小型ノートの系統と説明している。
ドライブを1つ(HDDだけ)しか内蔵しない「1スピンドル」の考え方は、のちのX20やX40、今のX1 Carbonまで続く、ThinkPadの薄型ノートの基本になった。会社ではポートリプリケーター(拡張用の台)につなげば、キーボードやマウス、フロッピーをまとめて使えた。
3. 発売直後から品切れが続いた
日本では1996年5月28日に出荷が始まった。PC Watchが5月30日に秋葉原の店に聞いたところ、ほとんどの店は「入荷未定」の予約受付で、「しばらくは入手困難な状況が続きそうだ」と書いている。7月の調査でも、133MHzの機種は新宿ヨドバシの本店をのぞいて在庫がなかった。
PC Watchのうわさのコラムは、「大企業から大量のバックオーダーが入って、すでに受注を締め切った」という話を「信憑性が高い」として紹介している。ノート数冊分の大きさで、机の引き出しに収まるのが会社で好評だった、という話も載っている。
4. 同じ本体で4世代続いた
560は、1996年の初代から1998年の560Zまで、297×222×31mm・約1.9kgの本体を変えずに中身だけを入れかえた。1997年11月の560Xについて、PC Watchは「MMX Pentium 200/233MHzのノートは、CD-ROMを内蔵して3kgを超える重いものが多かった」中で、同じ1.9kgに収めた560Xを「実用性の高い魅力的な製品」と書いている。
デザインの面でも評価され、1997年にはiFプロダクトデザイン賞を受けた(英語版Wikipedia)。
5. Xシリーズにつながる出発点
560の後継は1999年の570で、英語版Wikipediaによると、500番台は2000年からの「Xシリーズ」に引きつがれた。薄く軽い本体に、打ちやすいキーボードを妥協せずに載せる。この考え方は、X40やX300、今のX1 Carbonまで続いている。
イギリスのTechRadarは、ThinkPad 25周年の記事で、560を「最初のウルトラポータブル(超小型・軽量)ノート」と呼べるかもしれないと書いている(英語版Wikipediaより)。
当時のレビューの評価
1996〜1998年の主なレビューと評価は次のとおり。アメリカの雑誌・新聞は、英語版Wikipediaに書かれた記事の見出しを訳した。
| 媒体 | 時期 | 評価 |
|---|---|---|
| The New York Times | 1996年6月 | 見出しは「IBMのThinkPad 560:妥協の少ないノート」 |
| InfoWorld | 1996年7月 | 見出しは「明るく、薄く、軽い。ThinkPad 560は本物のノートだ」 |
| PC Watch(日本) | 1996年7月 | 実際に持つと「カタログ値よりも、なんとなく軽いような錯覚を憶える」 |
| PC Watch(日本) | 1997年11月 | 560Xは「実用性の高い魅力的な製品」。ただ1,024×768の液晶がないのは「やや残念」 |
| PC Magazine | 1997年12月 | 560Xの記事の見出しは「The X Factor」 |
| ZDNet(ジョン・ドボラック) | 1998年1月 | 560Xは、ポートリプリケーターと組めばデスクトップの代わりになる |
出典:英語版Wikipedia(The New York Times、InfoWorld、PC Magazine、ZDNetを引用)、PC Watch(1996年7月)、PC Watch(1997年11月)。訳は当サイトによる。
どのレビューも、薄く軽いのに、ふつうのノートと同じ画面とキーボードを使えることをいちばんにほめている。「妥協が少ない」「本物のノート」という見出しは、当時の小型ノートの多くが、画面やキーボードを小さくして軽さを取っていたことの裏返しでもある。
一方で弱点として挙がったのは、ドライブがすべて外付けで、フロッピーを使うたびにつなぐ必要があったこと、そして画面が800×600のままで、1,024×768に対応しなかったことだった。
日本での発売と当時の値段
日本IBMは、アメリカでの発表から1週間後の1996年5月28日に、560を国内で発表した。仕様はアメリカとほぼ同じで、キーボードだけを日本語の89キーにかえた。
| CPU | 画面・HDD | 価格 |
|---|---|---|
| 100MHz 2640-5JA/5J9 | 11.3型DSTN HDD 810MB | 37.8万円 |
| 120MHz 2640-EJA/EJ9 | 12.1型TFT HDD 810MB | 49.8万円 |
| 133MHz 2640-FJE/FJD | 12.1型TFT HDD 1.08GB | 59.8万円 |
出典:PC Watch(1996年5月28日)。価格は標準価格。型番の「A」「E」で終わるものがWindows 95、「9」「D」で終わるものがWindows 3.1とOS/2の機種。
秋葉原の実際の値段は、発売直後で32万9,800〜44万8,000円、7月には133MHzの機種が50万円前後、120MHzの機種が40万円前後だった(PC Watchの調査)。今の物価で考えても、ずいぶん高価なノートである。
PC Watchのうわさのコラムの筆者は、IBMのノートを「時計でいうROLEXの『Explorer I』っぽくて、持ってて安心感がある」と書いている。150kgの重さに耐えると聞いた人が試しにふんでもらったら、ハイヒールで液晶が割れた、という話もあわせて紹介している。うわさ話ではあるが、当時の人気ぶりが伝わってくる。
1997年2月には、メモリを40MBにふやし、外付けのCD-ROMドライブとモデムをセットにした限定1万台の「マルチメディアモデル」が37万9,000円(直販)で出た。日本IBMの堀田一芙氏は、これを「560も含めて、今市場で買える最高の製品の組み合わせ」と話している(PC Watch)。
1998年4月には、直販46万8,000円の560Xをもとに、増設メモリと外付けのCD-ROMドライブ、音声認識ソフトをセットにした「ViaVoiceキャンペーンモデル」が39万9,000円で出ている(PC Watch)。
海外レビューと動画の評価
560は今も、海外のYouTubeでレトロPCとして取り上げられている。今の目で見たポイントをまとめた。
- TechRadar(イギリス):ThinkPad 25周年の記事で、560を最初のウルトラポータブルと呼べるかもしれない機種として紹介
- ThePCCollector:560Eを「商業的に成功した、最初のウルトラポータブルノート」と紹介している
- Deckard Games:560Xを「1997年の2,500ドルのノート」として、付属品をひととおりつないで使っている
- Driven By Bytes:560Eを「1996年からのタイムカプセル」として紹介している
ThePCCollectorは、自分の好きな機種として560Eを取り上げ、実機を細かく見せている。
Deckard Gamesは、外付けのフロッピーやポートリプリケーターなど、560Xのたくさんの付属品をつないで使っている。ドライブを外に出した560の使い方がよく分かる。
動画は、YouTubeの埋め込み機能で紹介している。紹介文は各動画のタイトルと説明欄をもとにした。
今のレビューで共通して取り上げられているのは、30年前とは思えない薄さと、「ウルトラポータブルの始まり」という位置づけである。性能ではなく、今のノートの形を先に示した機種として見られている。
560から今に残るもの
560が示した「薄く軽く、でもキーボードは妥協しない」という考え方は、ThinkPadの薄型ノートの系譜として今も続いている。
- 570(1999年):560の後継。ドライブを入れた台「ウルトラベース」と組み合わせる形にした
- Xシリーズ(2000年〜):500番台を引きつぎ、小型・軽量のThinkPadの主力になった(英語版Wikipedia)
- X1 Carbon(2012年〜):14型で1kg前後。薄く軽いのにキーボードを妥協しない考え方を、今に受けついでいる
前の年に出た小型ノートのThinkPad 701Cは、キーボードを広げる仕組みで小ささと打ちやすさを両立させた。560は、本体を大きめのA4にして薄くするという、別の答えを出した機種だと言える。ThinkPadの名機を他の機種と並べて見たい人は、ThinkPadの歴代名機11選も読んでほしい。
560は今も手に入る?
560は30年前の機種なので、今は実用ではなく、コレクションとして手に入れるものである。中古の出品は多くないが、値段は名機の中では手ごろなほうだ。ヤフオクの落札相場のページでは、過去120日の約10件の平均が約4,400円と表示されていた(2026年11月に確認)。
買うときは、液晶が映るか、ちょうつがいが割れていないか、バッテリーやACアダプター、外付けのフロッピーがそろっているかを確かめたい。560のフロッピーは専用の端子でつなぐため、ドライブがない個体は使い方がかぎられる。
今のThinkPadで選ぶなら
560の「薄く軽く、画面もキーボードも妥協しない」という考え方を今受けついでいるのは、14型で1kgを切るX1 Carbonと、13.3型のX13である。今日の公式価格は次のとおり。
X1 Carbonの歴代モデルはX1歴代モデル一覧、世代ごとの違いはX1 Carbonの世代比較でくわしく書いている。
よくある質問
- ThinkPad 560の発売日はいつですか?
-
アメリカでは1996年5月21日に発表され、5月28日から出荷が始まった(133MHzの機種は7月)。日本では5月28日に発表され、同じ日から一部の機種の出荷が始まった(残りは6月28日)。
- 560の厚さと重さはどれくらいですか?
-
297×222×31mmで、A4ファイルとほぼ同じ大きさ、厚さ約3cmである。重さはバッテリー込みで約1.9kg。米IBMの発表では4.1ポンド(約1.86kg)となっている。
- 560・560E・560X・560Zの違いは何ですか?
-
本体の大きさと重さは同じで、CPUなどの中身が違う。560はPentium、560EはMMX Pentium 150・166MHz、560XはMMX Pentium 200・233MHzでUSBにも対応、560ZはPentium IIを載せている。
- 560にフロッピーやCD-ROMは入っていますか?
-
入っていない。薄くするために、フロッピーは専用の端子でつなぐ外付けで、CD-ROMは別売の外付けだった。
- 560の後継機は何ですか?
-
1999年のThinkPad 570である。その後、500番台は2000年からのXシリーズに引きつがれた。
- 560は今でも使えますか?
-
動く個体はあるが、30年前の機種なので、今のWindowsやインターネットには使えない。コレクションとして楽しむものと考えたい。
まとめ
ThinkPad 560は、1996年に出た薄型ノートである。A4ファイルの大きさで厚さ約3cm、約1.9kgの本体に、12.1型の液晶とフルサイズのキーボードを収め、当時のレビューで「妥協の少ないノート」と評価された。日本でも発売直後から品切れが続き、同じ本体のまま560Zまで4世代続いた。
ドライブを外に出して薄さを取った割り切りは、570からXシリーズ、今のX1 Carbonへと続く、薄型ThinkPadの出発点になった。それが、560が今も名機として語られる理由である。

参考にした資料
この記事は、次の資料の原文を読んで書いた。アメリカの当時のレビュー(The New York Times・InfoWorld・PC Magazine・ZDNet)とTechRadarの記事は、この環境から原文を開けなかったため、英語版Wikipediaに出典つきで書かれた内容を使っている。
海外の資料
- Wikipedia(英語)「ThinkPad 560」
- Wikipedia(英語)「ThinkPad」の「500 series」の節
- TechRadar「Looking back at the 25 year history of ThinkPad」(2017年)
- The New York Times・Stephen Manes「IBM’s Thinkpad 560: A Laptop With Few Compromises」(1996年6月11日)
- ZDNet・John Dvorak「All hail ThinkPad 560X」(1998年1月5日)
- iF World Design Guide「IBM ThinkPad 560」(Internet Archiveの保存版)
日本の資料
- PC Watch「米IBMが超薄型ノートパソコンThinkPad 560を発売」(1996年5月22日)
- PC Watch「IBM ThinkPad 560本日発表」(1996年5月28日)
- PC Watch「ThinkPad 535/560は一部のお店で在庫あり」(1996年5月30日調査)
- PC Watch「どこにあるのか133MHzのThinPad 560」(1996年7月12日)
- PC Watch「ThinkPad 560価格調査、32MB DIMM価格付き」(1996年7月18日調査)
- PC Watch「日本IBM、『ThinkPad 560/365X/760EL』シリーズに新モデルを追加」(1997年2月13日)
- PC Watch「IBM、CD-ROM内蔵のパーソナルノートThinkPad 385D/315Dなど6機種を発売」(1997年6月9日)
- PC Watch「日本IBM、MMX 233/200MHz搭載のThink Pad 560X」(1997年11月26日)
- PC Watch「IBM、ThinkPad新機種と560X/535Xの格安セット」(1998年4月16日)
- PC Watch「日本IBM、モバイルPentium II 300MHz搭載のThinkPadシリーズほか」(1998年9月9日)
- Wikipedia(日本語)「ThinkPad 560」



