「X1 Carbonほど高くなくていい。でも、T14(無印)は重くて持ち歩きたくない」 そんなビジネスパーソンの切実な願いを叶えるために生まれたのが、「ThinkPad T14s」シリーズです。
2020年に「T490s」の後継として誕生してから早数年。 その歴史は、単なるTシリーズの軽量版という枠を超え、「実務における最適解」を追求し続けた進化の歴史でもあります。
しかし、毎年モデルチェンジを繰り返す中で、ラインナップは複雑化しています。 「Gen 2とGen 3、見た目は似ているけど何が違うの?」 「AMD(Ryzen)モデルとIntelモデル、結局どっちが名機なの?」 「最新のGen 6は種類が多すぎて選べない……」
そこで本記事では、2020年の初代モデル(Gen 1)から2025年の最新機(Gen 6)まで、T14sシリーズの全系譜を完全網羅しました。 筐体デザインの刷新ポイント、画面比率の変更、そして今だからこそ狙い目な「中古市場の賢い選び方」まで。 T14sの購入を検討しているすべてのユーザーに贈る、完全保存版ガイドです。

T14sの系譜と年表
ThinkPad T14sは、14インチのスタンダード機「T14」をベースにしつつ、素材や設計を根本から見直して薄型・軽量化したモデルです。
歴史は2020年の「Gen 1」から始まり、原則として1年に1度、世代(Generation)を更新しています。
歴代モデル系譜図
中古市場で探す際は、この「発売年」と「世代」の対応が非常に重要です。特にGen 3での画面比率変更は最大の分岐点となります。
| 発売年 | モデル名 | 搭載CPU (Intel / AMD) | トピック |
| 2025 | Gen 6 | Lunar Lake / Arrow Lake Ryzen AI / Snapdragon | 【AI特化】 CPUが5種類に分岐。Copilot+対応。 |
| 2024 | Gen 5 | Core Ultra (Meteor Lake) Ryzen 8000 | 【デザイン刷新】 カメラバー採用。狭額縁化。 |
| 2023 | Gen 4 | 第13世代 Core (Raptor Lake) Ryzen 7000 | 【熟成】 500万画素カメラやOLED採用。 |
| 2022 | Gen 3 | 第12世代 Core (Alder Lake) Ryzen 6000 | 【大改革】 画面が16:10に変更。 ここが境界線。 |
| 2021 | Gen 2 | 第11世代 Core (Tiger Lake) Ryzen 5000 | 【素材変更】 アルミ天板モデルが登場。指紋認証統合。 |
| 2020 | Gen 1 | 第10世代 Core (Comet Lake) Ryzen 4000 | 【誕生】 T490sの後継として登場。 |
「s」の意味とX1との違い
T14sの「s」は「Slim(スリム)」を意味しますが、ユーザーの間では「Superior(上位)」や「Solid(堅実)」とも解釈されます。
フラッグシップの「X1 Carbon」とよく比較されますが、T14sには明確なメリットがあります。
- X1 Carbonより「安い」: 性能は同等ながら、素材のコストバランスを調整し安価に。
- X1 Carbonより「AMDが選べる」: X1はIntel専用機ですが、T14sは高性能なRyzenを選べます。
- X1 Carbonより「ポートが充実」: スマートカードリーダーなど、法人独自の要件に柔軟に対応します。
【最新】AI特化のGen 6
2025年に登場した最新世代は、歴代で最も劇的な変化を遂げました。ひとつの筐体に、Intel、AMD、そしてQualcomm(Snapdragon)という異なるアーキテクチャを搭載し、ユーザーが「頭脳」を選べるようになったのです。
- CPU: Core Ultra Series 2 / Ryzen AI 300 / Snapdragon X Elite
- 特長:
- Copilot+ PC準拠: NPUを搭載し、次世代のAI機能に対応。
- バッテリー革命: 特にLunar Lake版とSnapdragon版は、実働20時間を超える驚異的なスタミナを実現。
- 選び方の注意: メモリが増設不可のため、購入時の構成選びがこれまで以上に重要になりました。

【第2世代】16:10化 (Gen 3-5)
T14sの歴史において、最も重要な転換点が「Gen 3」です。 画面比率が従来の「16:9(横長)」から「16:10(縦に広い)」に変更され、Web閲覧やExcel作業の効率が劇的に向上しました。
中古や型落ちを狙うなら、予算が許す限りこの世代以降をおすすめします。
Gen 5 (2024)
- CPU: Core Ultra (Meteor Lake) / Ryzen 8000
- 解説: 筐体デザインを刷新。Webカメラ部分が出っ張った「コミュニケーションバー」デザインを採用し、開閉しやすくなりました。キーボードのCtrlキーとFnキーの位置が入れ替わった(左下がCtrlになった)最初のモデルでもあります。
- 狙い目: AI対応のCore Ultraを搭載しているため、長く使えるメイン機として優秀です。
Gen 4 (2023)
- CPU: 第13世代 Core (Raptor Lake) / Ryzen 7000
- 解説: Gen 3の筐体をベースに、中身をブラッシュアップした熟成機。500万画素の高画質カメラや、2.8K OLED(有機EL)ディスプレイが選択可能になり、リモートワークの質を高めました。
- 中古評価: 非常にバランスが良く、不具合報告も少ない安定した世代です。
Gen 3 (2022)
- CPU: 第12世代 Core (Alder Lake) / Ryzen 6000
- 解説: ここが境界線です。 画面が「1920×1200」へと縦長になり、筐体も新設計に。排熱設計も見直され、パフォーマンスが安定しました。
- 注意点: Intel版(第12世代)は発熱しやすいため、バッテリー持ちを重視するなら「Ryzen 6000版」の中古を探すのが通(ツウ)の選び方です。
【第1世代】黎明期 (Gen 1-2)
画面が「1920×1080」の横長スタイルだった時代です。
現在は型落ちとなり安価に入手できますが、画面の狭さやバッテリーの経年劣化には注意が必要です。
Gen 2 (2021)
- CPU: 第11世代 Core (Tiger Lake) / Ryzen 5000
- 解説: 電源ボタンに指紋センサーが統合され、使い勝手が向上しました。また、カラーバリエーションとして「ストームグレー(アルミ天板)」が登場。ThinkPad=黒という常識に一石を投じました。
- 中古評価: Ryzen 5000番台を搭載したモデルは今でも現役で通用する処理能力を持っています。コスパ重視なら狙い目です。
Gen 1 (2020)
- CPU: 第10世代 Core (Comet Lake) / Ryzen 4000
- 解説: 記念すべき初代モデル。T490sの後継として、軽量化(約1.27kg)を実現しました。
- 中古評価: Windows 11には対応していますが、さすがに動作の重さを感じることが増えてきました。サブ機やLinux用としての運用がおすすめです。
中古選び「3つの鉄則」
T14sを中古や型落ちで購入する際、絶対に確認すべきポイントが3つあります。
1. メモリは「16GB以上」が必須
T14sのメモリは、全世代を通じて「オンボード(基板直付け)」です。T14(無印)とは異なり、後からメモリを増設することは絶対にできません。
安価な8GBモデルが出回っていますが、Zoomとブラウザを同時に開くと重くなります。「16GB」搭載モデルを粘り強く探してください。
2. 「Ryzenモデル」は当たりが多い
T14sの歴史において、Intel版よりもAMD Ryzen版の方が「発熱が少なく、処理能力が高い」という逆転現象が起きていた時期(特にGen 1〜Gen 3)があります。
ブランドにこだわらないなら、「Ryzen 5 PRO」または「Ryzen 7 PRO」搭載モデルを選ぶと、幸せになれる確率が高いです。
3. 画面解像度の確認
Gen 1〜2には、粗い画質の「HD (1366×768) TN液晶」という構成が存在しました。
これを選んでしまうと、画面が白っぽく、作業領域も狭すぎて後悔します。必ず「FHD (1920×1080) IPS」以上であることをスペック表で確認してください。
【付録】歴代スペック詳細
ThinkPad T14sは、堅牢性、性能、モバイル性を兼ね備えたビジネス向けノートパソコンとして、モデルごとに進化を遂げてきました。各世代ごとの特徴を見ていきましょう。
- CPU:第10世代Intel Core(Comet Lake)
- 重さ:約1.27kg
- 特徴:薄型・軽量設計、最大16GBのRAM、最大1TBのSSD、14インチFHDディスプレイ
- 解説:ThinkPad T14s Gen1は、Tシリーズの中でも特にモバイル性能を重視したモデルとして登場しました。最大16GBのRAMと1TBのSSDにより、データの高速処理と大量保存が可能で、特にビジネスパーソンにとって効率的な作業環境を提供します。軽量でありながら、堅牢な筐体を維持し、MIL-STD-810G規格に準拠した耐久性を誇ります。これにより、出張や移動が多いユーザーにも最適です。Intelの第10世代Coreプロセッサを搭載し、日常的なオフィス作業はもちろん、重い業務にも十分に対応できる性能を発揮します。
- CPU:第11世代Intel Core(Tiger Lake)
- 重さ:約1.28kg
- 特徴:インテルIris Xeグラフィックス、最大32GBのRAM、最大1TBのSSD、14インチFHDディスプレイ、オプションで4Kディスプレイ
- 解説:T14s Gen2は、第11世代Intel Coreプロセッサ(Tiger Lake)とインテルIris Xeグラフィックスを搭載することで、性能が大幅に向上しました。特に、4Kディスプレイをオプションで選べるようになり、グラフィック性能が強化されたことで、より鮮明な映像を必要とするビジネスユーザーやクリエイターにも対応する仕様となっています。また、最大32GBのRAMと1TBのSSDにより、さらなる処理能力とストレージ容量を確保しています。セキュリティ機能の強化(指紋認証やTPM 2.0)も施され、企業向けのセキュリティ要件にもしっかりと対応しています。
- CPU:第12世代Intel Core(Alder Lake)
- 重さ:約1.28kg
- 特徴:Intel vPro対応、最大64GBのRAM、最大2TBのSSD、14インチWQXGAディスプレイ、Wi-Fi 6E対応
- 解説:T14s Gen3は、第12世代Intel Core(Alder Lake)を搭載したことで、さらに優れたパフォーマンスを実現しました。特にIntel vPro対応により、企業向けの高度な管理機能やセキュリティ機能を備え、リモート管理が可能です。最大64GBのRAMと2TBのSSDを搭載することで、極めて大容量のデータ処理が可能になり、開発者やデータサイエンティスト、クリエイティブ業務においても活躍できるスペックを誇ります。さらに、Wi-Fi 6E対応で、ネットワーク接続の速度や安定性が向上し、より快適なインターネット環境を提供します。
- CPU:第13世代Intel Core(Raptor Lake)
- 重さ:約1.26kg
- 特徴:最大64GBのRAM、最大2TBのSSD、14インチWQUXGAディスプレイ、WWAN対応、Wi-Fi 6E
- 解説:T14s Gen4は、第13世代Intel Core(Raptor Lake)を搭載し、さらに進化した性能を提供します。この世代のプロセッサは、高い処理能力とエネルギー効率を実現し、特にマルチタスクや高負荷の作業に優れた性能を発揮します。また、最大64GBのRAMと最大2TBのSSDにより、大量のデータを高速に処理でき、開発者やクリエイティブプロフェッショナルにも最適です。14インチWQUXGAディスプレイは、鮮明な画質を提供し、WWAN対応により、外出先でも安定したインターネット接続が可能です。さらに、Wi-Fi 6E対応で、より速く安定したネットワーク接続を実現しています。
- CPU:第14世代Intel Core(Meteor Lake)
- 重さ:約1.25kg
- 特徴:最大64GBのRAM、最大2TBのSSD、14インチWQXGAディスプレイ、Wi-Fi 7対応、WWAN対応
- 解説:ThinkPad T14s Gen5は、第14世代Intel Core(Meteor Lake)プロセッサを搭載し、さらに強化された性能を提供します。Meteor Lakeは、特にAI処理性能やグラフィック性能が大幅に向上しており、プロフェッショナルな作業環境においても高いパフォーマンスを発揮します。
まとめ:実務派の到達点
ThinkPad T14sの歴史を振り返ると、このシリーズが常に「ビジネスの現場で本当に必要なものは何か?」を問い続けてきたことが分かります。
薄さを極めるX1 Carbonのような派手さはありません。 しかし、必要なポートを削らず、キーボードの打ち心地を犠牲にせず、それでも毎日持ち運べる軽さを実現する。 その「実用性の塊」のような設計思想こそが、多くのプロフェッショナルに支持され続けている理由です。
- 新品で選ぶなら: AI性能と圧倒的なバッテリー持ちを手に入れた「Gen 6」が正解です。特にLunar Lakeモデルは、T14sの歴史の中でも最大の飛躍と言えます。
- 中古で選ぶなら: 作業効率が劇的に変わる「16:10画面」採用の「Gen 3 (2022)」以降が狙い目です。そして、長く使うために「メモリ16GB」だけは妥協しないでください。
「ブランド名よりも、日々の成果(アウトプット)を重視したい」。 そう考えるあなたにとって、ThinkPad T14sは間違いなく最高の相棒となるはずです。
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